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不整脈

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不整脈

徳島大学大学病院 循環器内科 助教
松浦 朋美Tomomi MATSUURA
不整脈専門医を中心とした医師、看護師、放射線技師、

臨床工学士が協力してチーム医療を行っています。
循環器疾患の中でも不整脈の領域は、近年、その治療方法に関して目覚ましい発展を遂げており、当院でも新しい治療方法を積極的に取り入れながら、不整脈でお困りの患者様の治療に取り組んでいます。

カテーテルアブレーション

 様々な頻脈性不整脈に対する根治療法としてカテーテルアブレーションを積極的に行っています。三次元マッピングを利用した高周波カテーテルアブレーションをはじめとして、発作性心房細動に対する冷凍凝固アブレーション、レーザーバルーンアブレーションなど、国内最新の治療も取り入れています。近年では、高齢化社会が進むとともに、心房細動を発症する患者さんが年々増加傾向にあり、脳梗塞や心不全発症の一因となるなど、その治療意義も非常に高まっています。発作性心房細動のカテーテルアブレーションの成功率は90%を超えています。その他の頻脈性不整脈に関しても、積極的に治療を行っています。

心房細動に対する肺静脈隔離術
(高周波アブレーション; 3Dマッピング像)

肺静脈隔離術の方法

植込み型デバイス治療

徐脈性不整脈に対してはペースメーカー植込み術を多数行っています。ペースメーカーについても、従来の経静脈システムの他、病状によってはリードレスペースメーカーの植え込みも行っています。

また、生命に関わる致死性不整脈に対しては植え込み型除細動器(ICD)、また心臓機能低下により心不全でお困りの患者様に対しては心臓再同期療法(CRT-P, CRT-D)といったデバイス治療も積極的に行っています。また、ICDが必要な患者さんでは、病状によって完全皮下植込み型除細動器(S-ICD)を選択したり、必要に応じて一時的に着用型自動除細動器(WCD)を使用するなど、病状に合わせて多彩な治療が可能です。さらに、原因不明の失神については重篤な不整脈が隠れていることもあり、こういったことが疑われれば心臓電気生理検査を行ったり、植え込み型心電計を用いたりして原因解明に努めています。これら植込み型関連デバイスを植え込み後の患者さまにつきましては、遠隔モニタリングシステムを利用し、ご自宅にいながら病院を受診することなく、異常等を早期発見できる体制も整えております。

不整脈でお困りの全ての患者様のお役に立てるように学会認定不整脈専門医2名を中心として対応いたします。

病状に応じた各種デバイスの植え込みが可能です

遠隔モニタリングによる管理、
異常所見の早期発見に役立てています.

研究

心房細動の病態解明―基礎的アプローチ―

心房細動では病態発現の共通基盤として慢性炎症が存在すると考えられています。しかしながら、そのメカニズムは不明な点が多く、我々は遺伝子改変マウスなどの動物モデルに対し電気生理学的アプローチで心房細動モデルを作成し、その病態解明や新しい治療法の開発に取り組んでいます。その一つとして、活性化第X凝固因子(FXa)- protease-activated receptor (PAR)-2経路が心房細動発症に寄与していることをPAR-2欠損マウス、高血圧ラットを用いて生理学的・生化学的に証明しました。

心房細動の病態解明―臨床的アプローチ―

ヒトにおいては、心房細動の慢性炎症の病態解明とともに、心房細動の発症や予後のリスク評価を簡便に行えるマーカーの探索を行っています。実際。炎症局所より産生される炎症性バイオマーカーである血中のPentraxin 3は心房細動における心房リモデリングと関連があること、microRNA-328値は心房の構造的リモデリングに関与している可能性などを見出しました。また、年齢、ホルター心電図での上室期外収縮、最大RR間隔、および心エコーでの左房径を用いたリスクスコアが心房細動のリスク因子として有用であることを報告しました。

生理活性ペプチドを用いた新しい心臓病治療法の開発

生体内で細胞間の情報伝達を担うホルモンの一種である生理活性ペプチドを用いて不整脈や心不全の新しい診断・治療法の開発を行っています。生理活性ペプチドは元々生体内に存在するものであり、治療薬としては副作用が少ないことが大きなメリットになります。その一つとして、グレリンの心臓自律神経調節作用を世界で初めて明らかにしました。グレリンは心筋梗塞ラットにおいて梗塞により増加していた交感神経活性を低下させること、心筋虚血モデルラットにおいて心臓自律神経調節作用を介して心室性頻拍性不整脈の出現頻度を抑制することを明らかにしました。さらに、ヒトにおいてもグレリンが副交感神経活性化作用と交感神経抑制作用を有することを明らかにしており、ヒトへの応用についても準備を進めています。

カテーテルアブレーションを安全に効率よく行うための研究

カテーテルアブレーションを正確に行うため、新たな心臓電気生理学的検査法・診断法を探索しています。実際、電極カテーテルでのペーシングを工夫することによって房室結節の遅伝導路や速伝導路、Bachmann束、心外膜コネクションの位置を見出すことによってより安全に効率よくカテーテルアブレーションが出来ることを見出しており、その一部を報告しています。

MESSAGE

これから循環器内科を目指す若手医師の皆さん

 不整脈治療という領域は治療技術の進歩が目覚ましく、学術的な伸びしろも大きく、若い先生方にとって、とても魅力的な分野です。これからの治療を担う主役は皆さんです。ぜひ一緒に徳島の不整脈診療を充実させていきましょう!

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