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循環器内科で行われる検査と治療について

心臓カテーテル検査

手足の血管から細い管(カテーテル)を心臓まで進めて冠状動脈(心臓の筋肉に酸素やエネルギーを供給している大切な血管)などの血管に動脈硬化などによる異常がないかを調べることができます。 また心臓の中で圧力を計ったり、造影剤を使って心臓の動きを観察したりすることにより心機能の状態も調べることができます。
冠動脈造影は造影用カテーテルという鉛筆の芯くらいの太さのカテーテルを冠動脈の入口に挿入し、造影剤を注入して冠動脈の流れをレントゲン撮影する検査です。主に狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患に対して行う検査で、冠動脈の動脈硬化(アテローム硬化)による狭窄・閉塞、あるいは冠動脈の攣縮(痙攣)の有無やその位置を確かめて治療方法を決めて行きます。カテーテルは手首・肘・ソケイ部(足の付け根)のいずれかの動脈から挿入しますが、動脈からの検査のため検査後は十分な止血が必要になります。
当院では基本的には検査後の運動制限が比較的少ない手首からの検査を行っております。通常の検査であれば検査時間は30分程度です。

経皮的冠動脈形成術(PTCA)

狭心症や心筋梗塞を対象としたカテーテル治療です。狭心症や心筋梗塞は,心臓を養う血管(冠動脈)が動脈硬化により狭くなったり閉塞したりして起こって来る病気ですが、 この治療は、先端に風船の付いたカテーテルを冠動脈の狭くなった箇所や閉塞した箇所まで挿入し、そこで風船を拡張することによりその病変を押し拡げて血液の流れを改善します。 最近は、風船だけで冠動脈を拡げるだけではなく、狭くなっている病変の状態に応じて筒状の金属の網の支え(ステント)を入れたりします。
しかしながら、こういうカテーテル治療にも問題点があり、その最大のものは、一度拡げた病変が数カ月経つとまた血管内に肉芽が盛り上がり再度血管が細くなる再狭窄という現象です。 これに対して、2004年より本邦でも使用可能となった薬剤溶出ステント(Drug-Eluting Stent:DES)は再狭窄を著しく抑えることができ、非常に良い治療効果をもたらせています。 但し、薬剤溶出ステントは、長期間(可能なら1年以上)の抗血小板剤の服用が必要なので、今後手術の予定などがあるために内服薬の継続が困難な患者さんには従来のステントを使用するようにもしています。
このように我々は、全症例に盲目的に薬剤溶出ステントを用いることはせずに、患者さん個々の適応を慎重に検討し治療法を決定しています。 急性心筋梗塞に対してはできるだけ早く急性期に、また陳旧性心筋梗塞や狭心症に対しては待機的にカテーテル治療を行っています。

バルーン拡張術

ステント留置術

心臓電気生理検査

心臓電気生理学的検査とは、不整脈の原因や性質をしらべ、その治療方法を決めるために行われる検査です。不整脈の検査には心電図検査など、非侵襲的な方法もありますが、カテーテル検査により得られる、心腔内心電図や不整脈誘発試験などは、他の方法では知り得ない極めて精度の高い情報であり、治療方針決定において極めて重要なものです。
実際のやり方は、まずソケイ部(足の付け根)などカテーテルを挿入する部位を局所麻酔し、直径約2~3mm程度のカテーテルを入れ替えるための鞘(シース)を挿入します。このシースを通して、細い管(カテーテル)を合計4~5本心臓の中へ入れます。カテーテルを心臓の中に入れるときは太い血管の中を通っていくので、痛みはほとんどありませんが、敏感な方 は感じることもあります。
これらのカテーテルを用いて、不整脈が発生している場所の近くの心電図を記録し、心臓の電気興奮過程の地図を作ります。また複数箇所から刺激(ペーシング)をして、病気の原因になっている場所の正確な位置を調べます。いつもの動悸と同じ発作を引き起こすことができれば、不整脈の成因、発生源を正確に調べることができます。

カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)

心臓はリズミカルに規則正しく拍動していますが、頻脈性不整脈になると、本来の脈とは異なる頻拍(毎分100心拍以上)になります。主な症状としては、動悸を感じたり、気が遠くなったり、めまいがすることがあるため、きちんと検査をして、病気にあった治療法を選択せねばなりません。
この頻脈性不整脈に対する治療法は、大きく分けて2つの方法があります。一つは薬を用いて、発作を予防したり、あるいは生じた発作を止める方法です。比較的手軽にできますが、病気を抑えるだけで、病気が完全に治ってしまう(なくなってしまう)と言うわけではありませんし、副作用の心配もあります。もう一つがカテーテルアブレーション(心筋焼灼術)です。この方法は細い管(カテーテル)を体の中に入れて不整脈のもととなる異常な部分に高周波電流を流し焼灼することにより頻脈性不整脈を完全に治す(根治する)ことが可能です。簡単なことではありませんが、技術の進歩に伴い、比較的安全に、苦痛も少なく行えるようになっています。
実際のカテーテルアブレーションは、まず心臓電気生理検査(上述)により不整脈の原因となる部位をある程度特定し、治療用のカテーテルをその場所まで持っていって行います。実際には原因となる部位は目に見えるわけではありません。少しずつカテーテルを動かし、心臓の刺激をおこない、場所を確認しながら探していきます。治療は電気(高周波)を使って、約1分間カテーテルの先の部分を摂氏60度程度に上げ、心臓の一部にやけどを起こさせることで行います。治療の影響が及ぶ範囲はカテーテルの先端から半径3〜5mm程度の小さな範囲です。治療を行っている時は、人によっては胸が熱く感じたり、痛みを感じることがありますが、一時的なものですぐに消失します。

ペースメーカ植込み術

心臓は,成人の場合1分間に約70回規則正しく拍動しますが、この心拍数が極端に少なくなると疲労感や息切れ・めまいなどが現れ、重症の時には意識を失う発作が起きることもあります。
主な原因は心臓を拍動させるための電気的な興奮刺激の流れ(刺激伝導系)の 機能低下によるもので、重篤な場合心臓ペースメーカにより人工的に心臓への電気的興奮刺激を補う治療法が行われます。 ペースメーカ植込み術の適応となる具体的な病気としては、房室ブロックと洞不全症候群があります。心臓は収縮を命令する指令センターである“洞結節”と呼ばれる特殊な細胞の集まりと、洞結節からの命令を心臓全体の心筋細胞に伝える電話線のような役割を担う刺 激伝導系と呼ばれる仕組みを持っています。この中で、房室ブロックはこの電話線(刺激伝 導系)が切れてしまっている状態、洞不全症候群は刺激伝導系の指令センターである洞結節が故障した状態です。ペースメーカは、電池と電気回路を組み合わせた発信器(ジェネレータ)が組み込まれた 本体と心臓への電気刺激を伝えるための細長い電極(リード)により構成されます。
現在、最も一般的なペースメーカの植込み方法を紹介します。まず前上胸部(鎖骨のやや 下)の皮膚を局所麻酔し皮膚を数cm切開し、皮下に小さなポケットをつくります。次に鎖骨の 下を走る太い静脈にペースメーカ本体と心臓を結ぶリードといわれる細い導線を透視を見ながら挿入します。つづいて測定機器を使ってリードの位置が適切であることを確認します(リードはペースメーカの種類により、2本使用する場合と1本だけ使用する場合があります)。 最後に、リードをペースメーカ本体につなぎ、本体を皮下のポケットにしまい、切開した部分を縫合して手術を終了します。


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