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AHA2024に参加して (髙橋 智紀)
AHA2024 学会紀行
髙橋智紀
今年のAHA2024は,シカゴで3日間にわたり開催されました.現地の気温は寒いものの,昨年ほど厳しい寒さではなかったと感じました.シカゴは大麻が合法であるため,街角やホテルの廊下に大麻の匂いが漂っていました.夜に地下鉄車両内で大麻を味わっている方と二人きりになることもありました.最初は,車内に副流煙がこもり,何か絡まれたらと警戒していましたが,割り切って乗り続けているうちに次第にリラックスしてhappyな気持ちになりました.
移動手段は主に地下鉄とバスを利用しました.地下鉄の改札ではクレジットカードのタッチ機能が使えるように見えましたが,私の楽天VISAカードは反応しませんでした(一般のお店では問題なく使用可能でした).市内の地下鉄とバス共通のアプリがあり,このアプリ上で3日間の乗車券を購入し,Apple Watchに登録すれば,以後はApple Watchだけでスムーズに乗車できました.
学会の規模は昨年フィラデルフィアで開催されたAHA2023と比べても遜色ありませんでした.AHAの特色のひとつは,最近のESCとは異なりポスター発表が依然として受け入れられている点です.紙ポスターは多くの発表を短時間で見ることができるため,独創的なアイデアや,ポスターのデザイン,レイアウトを学ぶことができます.私自身,コーヒー片手にポスターをゆっくりと吟味する時間が,学会中の楽しみでもありました.
Late-Breakingで個人的に興味深かったのは,ブラジルから報告されたSARAH試験でした.この試験は,アントラサイクリン系の化学療法を受けている患者におけるsac/valの心毒性予防効果を検討したものでした.単施設で実施されたRCTで,症例数はsac/val群(n=57)とコントロール群(n=57)という規模で,決して大規模な試験とは言えませんでしたが,新しい視点と適切な研究デザインが高く評価されている印象を受けました.このような小規模ながら堅実かつ将来の医学の発展に繋がるような研究を,いつかは自分もしてみたいものだと大いに刺激をうけました.
1人での参加だったこともあり,観光らしい観光はあまりしませんでしたが,学会後は散歩を楽しみました.路上ではミュージシャン達がパフォーマンスをしており,それらがシカゴらしい雰囲気を醸し出しているようでした.夕食は,シカゴ名物とされるホットドッグ,リブステーキ,シカゴピザ,クラフトビールを堪能しました.
今回の学会では,医局からクリーブランドに留学中の大櫛先生の発表もありました.テーマはレフレル心内膜炎とエコー指標に関する研究でした.稀な疾患であっても一定の症例数を集めて検討できる点に,海外のハイボリュームセンターの力を改めて実感しました.大櫛先生ご自身は発表内容に満足されていない様子でしたが,英語での発表と質疑応答を堂々とこなされていました.
学会終了後翌日に,クリーブランドまで足を延ばしてクリーブランドクリニックを訪問しました.この日は,大櫛先生のアテンドでクリニックの見学やPIの先生との面談,研究に関する打ち合わせを行い,非常に充実した1日となりました.昼食の時間には,現地での生活や留学開始時の準備,住居選びのアドバイス,研究の進め方,注意すべきポイントなどを大櫛先生から細かく教えていただきました.また,私からは現在の研究内容や大学の状況について共有しました.その後もお互いに統計解析や研究の進め方,今後のキャリアや研究テーマについてじっくり話し合いました.話が尽きることはなく,クリーブランドのカフェで数時間語り合った時間はとても貴重なひとときでした.留学中の大切な時間を割いていただいた大櫛先生にはこの場をお借りしてお礼申し上げます.
クリーブランド留学中の大櫛先生(右)と筆者(左)