教室紹介
学会紀行
今年のESC2024(ヨーロッパ心臓病学会)は,ロンドンのエクセル展覧会センターで8月30日から9月2日までの4日間にわたって開催されました.ロンドンは,日本と比べると涼しく,スーツで過ごしていると肌寒く感じる瞬間もありました.気温だけでなく,街全体も整然としていて美しく,観光スポットも豊富です.交通機関も発達しており,移動もとても便利でした.
印象的だったのは,ロンドンの交通機関がタッチ決済に完全に対応している点です.VISAやマスターカードブランドのクレジットカードをApple Watchと紐づけておけば,電車,バス,水上バスのすべてにApple Watchのみで乗車でき,現金を一度も使う必要がありませんでした.街中のショップやレストランでも現金が不要であるのは言うまでもなく,物理カードですら使用したのはスーパーでの買い物1回のみで,それ以外はすべてApple Watchを使用したタッチ決済で完結しました.昨年のAHA@Philadelphiaでも同様であり,このスタイルはもはや最近の大都市では定番となっているようです.
学会の会場は昨年アムステルダムで開催されたESCよりもやや小さめでしたが,三尖弁治療デバイスの最新エビデンスや,HFpEFに対するフィネレノンのトライアルなど,注目すべき発表が多数ありました.特に日本からは,佐賀大学の田中先生によるPREMIRE studyの発表が印象的でした.今年は昨年に比べて日本からの参加者も増加しているように感じました.複数演題を発表されている方や,多数の演題を発表されている施設もあり,良い刺激になりました.
Abstract sessionに関しては,サンプルサイズが小さくても,内容や研究デザインがしっかりしていればpreliminaryとしてacceptされている例がいくつもあり,地方の大学や市中病院からも十分にチャンスがあることを実感しました.研究は一人で行うものではなく,複数の意見を交えながら,時に批判的な意見も素直に受け入れ,ブラッシュアップしていくことの大切さを改めて実感しました.一方,clinical case(症例報告)においては,その希少性のみならず,教育的な視点が採択において重視されているようでした.
私の発表自体は,正直なところ緊張のために思うようにいかず,悔しい結果となりました.発表後には複数の国の医師とディスカッションを行う機会があり,国際学会の醍醐味を味わうことができました.
学会後は,少しだけ観光も楽しみました.ビッグベンやタワーブリッジ(映画『スパイダーマン/ファーフロムホームのロケ地』),MI6(イギリスの情報機関のひとつ.映画『007』などに登場する)などを巡りました.特にMI6を近くの橋から眺めた際,映画『007/スカイフォール』でダニエル・クレイグが扮するジェームズ・ボンドや,ジョディ・デンチが演じたMが見たであろう光景に思いを馳せることで,現実のロンドンと劇中のロンドンが重なり合い,あのスリリングな瞬間を自身が体験しているかのような錯覚に陥りました.
来年のESCはスペインのマドリッドで開催されます.次回も参加できるよう,引き続き努力を重ねていきたいと思います.
ESC2024に参加した徳島大学メンバー(左から西條先生・筆者・八木先生) ギネスビールと西條先生.
イギリス情報機関”MI6”を前にポージングを決めるエージェント『Y』. ロンドンは,かの有名なストリートアーティスト
『バンクシー』の活動拠点でも知られる.
同じくストリートアーティストの『キング・ロボ』(故人)
とのグラフィティ戦争(上書き合戦)の一幕.