教室紹介
学会紀行
2025年8月29日〜9月1日にスペイン・マドリードで開催されたヨーロッパ心臓病学会(ESC2025)に参加しました.マドリードは日本より乾燥していて涼しく,日中も過ごしやすい気候でした.また夜の21時でもまだ明るく,明るいうちに行動できる時間が長くお得に感じました.ヨーロッパの中でも西側に位置するにも関わらず,中央ヨーロッパ時間を採用していることが原因で,日没が遅くなるように感じられるようです.
会場は昨年ロンドンで開催されたESC2024よりも一段と広く感じられました.プログラムも多彩で,心血管医療の現在地と次の潮流を肌で感じることができました.
今回の学会では,国内で実施されたRCTであるPREMIER trialのサブ解析として,急性心不全患者に対するSacubitril/Valsartan (Sac/Val)の投与が心臓のリバースリモデリングに及ぼす影響を検証した演題について報告する機会を頂きました.PREMIER trialは,これまで報告のなかった日本人患者における急性心不全入院期からのSac/Valの有効性を初めて示したRCTです.これまでに,Sac/Valの有効性を検討したRCTはいくつか報告されていますが,急性期のリバースリモデリング効果を正面から評価した報告はまだ多くありません.その中で,新たなエビデンスを示すことができたと考えています.また,本テーマは神戸大学今井先生,佐賀大学田中先生,琉球大学楠瀬先生らのご尽力により,EHJ-Cardiovascular Pharmacotherapy(EHJ-CVP)誌との同時掲載に至りました.同時掲載は初めての経験であり,そこに至るプロセスを学ぶことができました.
徳島大学の医局に入局して6年になりますが,多くの国際・国内学会での発表を経験させて頂きました.どうしても「研究」と聞くと,“自分にはできない”,“厳しい批判で心が折れてしまうのでは”,“結果が出なければ無駄,役に立たないのでは”などと,尻込みしてしまう方もいらっしゃるかもしれません.私もかつてはそうでした.しかし大学院に進学し研究活動に触れてみると,日常臨床で扱っていたものをより深く理解できたり,自分の疑問を解き明かすことに挑戦できたりする楽しさがあることに気づきました.何より,ひとりでテーマを抱えるのではなく,様々な方のご指導をいただきながら完成させていく“チーム感”こそ,研究の最も魅力的なところだと思っています.
このような研究の魅力は,環境や仲間に恵まれることでさらに広がります.当科には派閥的な空気はなく,“気に入らないから”と部下を避けるような上司も存在しません.臨床で生まれた疑問を研究へと発展させ,必要な助言やコラボレーションを得ながら,やりたいことに挑戦できる自由闊達な風土があると感じています.“臨床を極めたい”,“研究にも挑みたい”,“世界に届く仕事がしたい”...そのいずれも,当科なら両立できると思います.
最後になりましたが,このような機会を頂いた,当科の佐田先生,琉球大学の楠瀬先生,佐賀大学の田中先生,野出先生に心より御礼申し上げます.マドリードで得た熱量を,これからの研究に還元していきたいと思います.

図1:スペインめし1
A:チュロス(右)をホットチョコレート(左)につけながら食べる.
B:ハモンセラーノ(生ハム)とビール.スペインの“ちょっといいビール”である「INEDIT」のドラフトが最高でこればかり飲んでいた.
C:シーフードパエリア.美味.
D:イカ墨パエリア.やはり美味.
E:シーフードのフライ.特にイカリングが柔らかくて絶品.
F:マッシュルームにハムのせてオリーブオイルかけて焼いたやつ.定番らしい.おかずというよりは,完全にツマミだった.
図2:スペインめし2
G:新鮮なシーフードで知られる「セバダ市場」.魚屋がその場で調理してくれる.『そのコップ持っててあげるから写真とりなよ』と地元のお客さん.
H:マテ貝にチャレンジした.茹でてオリーブオイルとパセリを振っただけだが,臭みや砂利感はなく,貝類特有の甘みと歯ごたえがあり,とても美味.これは日本でもチャレンジしてみようと思った.
I:Tinto de Verano(ティント・デ・ベラーノ).電車待ちのためにバルで時間をつぶしていた時,サングリアを注文したら,店内の陽気スペインニキが『おいおい,サングリアなんてツーリストか(酒の)ビギナーしか飲まないぜ,これにしな.』と教えてくれた.赤ワイン+ソーダ.帰国後に知人(スペイン人)に確認したところ,同様の発言あり.
J:子豚の丸焼きを切り分ける料理.私の皿には頭部があたった.味は博多の豚骨ラーメンのスープと似た風味.
K:モッツアレラバーのタパス.見た目は映えてたが味は普通.
L:生牡蠣もあった.チャレンジしたかったが断念した.
図3:観光
M:闘牛観戦を経験した.聞いたところ,スペイン国内でも動物愛護の観点から闘牛反対の風潮が強く,バルセロナを含む多くの地区では禁止されているらしい.マドリッドでも近い将来規制されるだろう,とのこと.確かに空席が目立った.一方でファンや小さい子供の声援もあり,根強い人気が残っていることも窺えた.
N:セゴビアのローマ水道橋.この写真は20時55分に撮影した.
O:2000年以上も前に花崗岩のブロックを積み上げて作られたものが今も現存している.重機などはないのはもちろん,接着剤もなしとのこと.それでもなお崩れることなく残り続けるアーチを前に,どのようにして造られたのかと思いを馳せた.